June 4, 2015
January 29, 2024

海外で生活していく中で

By:

山城 沙千子 Sachiko Yamashiro, M.A. Clin.Psy.

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現在マレーシアにおける日本人居住者は2万人強と言われています(2013年10月)。特に都心においては日本人が住みやすい環境がずいぶん整い、生活に大きな支障をきたすことはないでしょう。それでも慣れ親しんだ日本を離れ、言葉や文化、気候、衛生観念、ビジネス習慣も違う環境で生活していくことは、これまでと違った困難に直面することになります。
予測を裏切られることが多く、日常レベルでやれていたことがやりにくくなる、ということや、人間関係の中で次第に生じてくるもつれは、大きな精神的負担となります。また、気の知れた親しい人に気軽に相談できない環境にあって、それらストレスも蓄積されやすくなります。職場、育児、学業において生じて来る問題は、家族、夫婦関係を悪くすることがありますが、特に家庭内の問題は相談しにくく、複雑化してしまうこともあります。背後にこれまで気が付かなった何かしらの大きな原因が潜んでいることもあります。
そうしたストレスは様々な形となって表れてきます。疲れていても眠れない・食欲がない・便秘がちになる・体のさまざまな痛みといった身体的生理的な面から、集中できない・ミスが増える・忘れっぽい・疲れやすい・感情の起伏が激しい・突然涙が出る・気持ちが沈むといった気分・気力の面など、表れ方も様々です。また、お子さんにおいては、おねしょをする、赤ちゃん返りをする、攻撃的になる、学校でトラブルを起こすようになる、ものを盗むなどといった行動面に表れてきます。
このような中で大切なのは、小さな変化に気付くことです。心理的な問題に関しては「甘え」であったり「怠け」と思いやすい傾向にありますが、環境や状況を鑑みるとそうではないことのほうが多く、こうした考えが落とし穴になることがあります。また、悩みは自分一人で抱え込むほど、解決しにくくなってきます。
困難の原因はなんなのか、今の状態をどう理解すればいいのか、自分は大丈夫なのか、どうすれば改善されるのか、人はこのような問いを誰かに聞いてもらう中で答えを自ら導き出していく力があります。なにより、話すだけでもふわっと気持ちが楽になります。そして変化は急には起こりません。急激な変化は一時的で、最終的な変化の過程にすぎません。雨が降り、時間をかけて山から地下水が染み出てくるように、変化は緩やかに、そして確実に起こってきます。そうした人生の大事な変化において、カウンセリングが役立つことを願っています。

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